注文した食料品や日用品が届く週1日の生協の宅配日。待ちかねた田口さん(右)は笑顔で生協職員を出迎えた(鳥取県日南町で) 農協スーパー撤退 島根、岡山、広島と県境を接する鳥取県南西部の日南町。人口は約6000人で、高齢化率45%は県内自治体で最も高い。冬は除雪車が出動する山あいの町の食卓を支えてきたのは4店の「農協スーパー」だ。3月、このうちの3店が閉店になった。
中でも、760人が暮らし、高齢化率52%の多里(たり)地区では、これで生鮮食品を扱う店がなくなった。閉鎖の話を昨年末に聞いた田口一美さん(74)は途方に暮れた。「体が動かなくなったら、もう暮らせない」
8年前、母の介護に、京都から元タクシー運転手の夫(74)と帰郷。夫はその年に足を骨折し、ハンドルは握らない。ペーパードライバーだった一美さんは母の病院への送迎で車を走らせ、みとった後も、約15キロ離れた町中心部への買い出しに、月数回運転する。「運転はしんどい」。健康状態を考えると、免許証の自主返納も頭をよぎるなかでの、農協スーパー撤退だった。
多里地区で車を運転できないお年寄りは、近隣の子どもに買い物を頼むか、移動販売車での購入が頼り。自治会の「多里まちづくり推進協議会」は、スーパー閉鎖は死活問題として、町へ相談した。
おりから、県生活協同組合が、「個別配達(個配)」と呼ぶ宅配事業を郡部でも始めようとしていた。組合員がグループごとに指定場所で商品を受け取る「共同購入」も県内一円で展開していた。
多里地区の住民には、生協はなじみが薄く、あまり利用されていなかった。しかし、町や自治会の働きかけで、田口さんら4世帯が個配の利用を始め、12世帯が共同購入を申し込んだ。
スーパー閉鎖から、実際に個配が開始するまでの約1か月間、買い込んでいた冷凍食品中心の食事が続いただけに、田口さんはいま、「メロンやロールケーキ……。いろいろ買えるから、いつも多めに注文してしまう」。かさみがちな出費に苦笑するが、安堵(あんど)感が漂う。
県内の山間部で、農協スーパーの撤退が相次いでいる。JA鳥取西部(本所・米子市)によると、日南町を含む近隣4町には1994年当時、計16の直営店があった。それが、支所統廃合や売り上げ不振から、現在は、日南町中心部の1店だけになった。
その店も今年7月、直営の看板を下ろす。同JA幹部は「これまで店を閉鎖する時には引き受け手を探してきたが、ほとんど見つからなかった。大半が組合員である住民には申し訳ない気持ちだ」と話す。
一方、県生協の個配利用は今年5月現在で2229人と1年前より36%増に。担当者は「山間部から個配への要望は今後も増えるだろうし、力になりたい」とする。
日南町も支援の模索はしている。昨年末、ケーブルテレビ網を活用し、住民宅から地元の商店が注文を受け、品物を宅配するシステムの実験を一部地域で始めた。今夏から町内全域に広げる予定だが、今のところ、生鮮食品店の参加は見込めない。町の担当者は「経営者が高齢化し、採算面の不安もあって二の足を踏んでいる」と明かす。
多里まちづくり推進協議会会長の池内豊さん(61)は「過疎化と高齢化で食料品の確保すら難しくなり、宅配は頼みの綱だ。農協スーパー閉鎖のショックは大きく、生協の個配が今後も維持されていくよう、利用者を増やすことを考えたい」と話した。
郵便サービスでもそうだが、高齢者が多い地域では配達時に郵便受けや表札に札を立てるなどして孤独死などを未然に防いでいる。高齢者地域や過疎地では大きなスーパーマーケットが進出して来ないため、より孤独な高齢者が増え、危険である。また、都会と違い表札を付けて家の戸締りもしていない家が多いため、悪徳商法や犯罪に巻き込まれるケースも多発している。
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